消費者インサイトマップ作成ワークショップ

株式会社MOMO(モモ) 代表取締役
経営コンサルタント 公認心理師
マーケティングの新手法「消費者インサイト」とは?
ここ数年マーケティング業界を中心に「消費者インサイト」という手法が大変注目されています。「消費者インサイト」とは消費者自身も気が付いていない心の奥にある欲求を意味します。これを明らかにすれば消費者の心をつかむ商品開発ができ、新たなヒット商品を生み出せる……というわけで「消費者インサイト」は多くの企業やマーケティング部での合言葉になっています。
かつて物がない時代には「自動車がほしい」「テレビがほしい」というように消費者のニーズがとてもはっきりしていました。やがて商品が豊富になってくると、ニーズが見えにくくなってきました。そこで消費者へのインタビュー調査やアンケート調査を行い、「潜在ニーズ」を顕在化させることで、ヒット商品を生み出してきました。
しかし現在はニーズも潜在ニーズも掘り起こしつくした感があります。さまざまな商品があふれ、消費者がさらに欲しいものは特にないといった分析もあります。
しかし、人が物を買うのは実際的な必要からだけではありません。自分へのご褒美や誰かへの感謝のためなど、物を買う背後には、実に多様な理由があります。その中には消費者自身も把握していないような欲求もあります。
外出した際に、予定外の物をいろいろ買ってしまって、驚いたことはありませんか? 実は私たちは自分自身も理解していないさまざまな「欲求」「願望」から物を買っているのです。
これが「消費者インサイト」なのです。
インサイトは心理学では「深層心理」という言葉が使われています。深層心理の中にある消費に対する願望や欲求が消費者インサイトです。ですから通常のアンケートやインタビューで話を聞いても消費者インサイトは明らかにはなりません。
消費者インサイトを引き出すには心理学の手法を用いる必要があります。カウンセラーやセラピストが深層心理を見るために用いる手法を活用したものです
残念なことにこうしたことを正確に理解している企業やマーケティング担当者が非常に少ないことです。消費者インサイトを潜在ニーズと誤解しているところが多いのが現状です。
このワークショップで実際に自分のインサイトマップを作りながら、消費者インサイトについて正しく学んでください。
写真を使って深層心理へ…インサイトマップの作り方
消費者インサイトはどのように引き出していくのでしょうか?
通常は写真などのイメージを使ってインサイトを探っていきます。百枚ほどの多種多様な写真を用意し、「消費において気になるもの」を自由にセレクトしていただきます。
深層心理は言葉で聞いても出てきません。深層心理の入口は夢や写真や絵などイメージなんですね。なんとなく気になる絵や写真はその人の深層心理の表現する物である可能性が高いのです。
写真を選択してもらったら、その人にとってどんな意味を持つのか、1枚1枚丁寧な質問をして深く掘り下げていきます。そこから消費インサイトが明らかになっていくのです。
え?そんなことで?と半信半疑に思われるかもしれません。
実際にワークショップの受講者の例を少し紹介しましょう。
ある20代後半の青年は「神社」「バイク」といった数枚の写真を選びました。
「この写真からどんなことが思い浮かびますか」と、まずはそれぞれの写真について質問していきます。
神社の写真については「歴史のある場所」とまず印象を語りました。質問を深めていくと「昔の人も自分と同じようにここに佇んでいたのかと思った」という答えが飛び出しました。やがて、彼には「人とつながりたい」という願望、それも「時空を超えてつながりたい」という願望があることがわかりました。
バイクの写真は「買って乗りたい」とシンプルな願望をまず口にしましたが、やがて「バイクというマシンで自分の能力を超えたスピードが出せ、しかも自分でコントロールできるのが楽しい」と本人も思っていなかった言葉が出てきました。
このように選択したイメージに対して深く丁寧な質問をすることで本人も意図していない言葉が出てきて、深層心理が明らかになっていくのです。
インサイトマップ作りで、人を理解することの難しさに気づく
ワークショップでは3人1グループで進めていきます。
まず、それぞれ写真を選択し、選んだ写真について、ほかの2人が質問をしていきます。
質問の仕方など簡単な手順書などもお渡ししますが、最初はなかなかうまく聞き出せずにみなさん苦労しますね。時々私が入って質問を投げたりしながら、聞きだし方、質問の深め型、突っ込み方を練習してもらいます。
インサイトを明らかにするためにはなんといっても質問の仕方が重要です。さらに相手の答えに丁寧に共感することも大切です。そのあたりをまず体験していただきます。
インサイトマップが完成すると、みなさん非常に驚きますね。質問に答える段階でも「こんなことを思っていたの?」と自分の発言に驚く方が多い。その結果お客様への想像力が深くなります。
自分自身のことすらよく理解できていないことに気がつき、「人を理解するのは非常に難しい」ということを実感するんですね。この気づきはマーケティングの基本です。この感覚がある人とない人ではアンケート調査でも通常のインタビュー調査でも回答に対する理解の深さが全く異なります。
実は最近、マーケティングに携わる方々の人間理解が非常に浅くなってきているのでは?と危惧を感じています。全体に人への関心が薄れ、共感力も薄い。これはマーケッターとしては致命的なことです。
ワークショップでは「消費者インサイト」の手法を学ぶのと同時に、マーケティング関連部門に必須の人間理解力を高めていただきたいですね。
なお、最近はお客様相談窓口のスタッフ、ホテルなどのサービス業の社員の方の受講も増えてきました。お客様への理解や共感を深める必要性が多様な職種で高まっているようです。そういう方々にもさまざまなヒントがあるはずです。
ところで、ワークショップ終了後に受講者の多くの方が「自分のことをこんなに深く理解したのは初めての体験です」とおっしゃるんですよ。
インサイトマップ作成をきっかけに自分を深く理解し、今後の人生の指針が見えたという方も多いです。これもワークショップの隠れたもう一つの効果だと思っています。